殺したい犯人 殺されたい被害者 そして目の前で事件を起こして欲しくない探偵
一風変わった舞台設定のミステリーを読みたければこの人 石持浅海さん
個人的にオススメの読書ランキングでも何冊もランクインしている作家さんです。
【2021年版】圧倒的にオススメ 読んでなければ読んでほしい 文学・ミステリー小説ランキング100
今回は未読だったこちらを読みましたのでレビューしていきます。
代表作の「扉は閉ざされたまま」に登場する探偵碓氷優佳登場の第2弾です
前回の密室殺人を密室が開かないまま事件を解決するのと同様
殺したい犯人と、殺させたい被害者が存在するというこれまた特殊な設定に巻き込まれております。
簡単なあらすじは以下の通りです。
簡単なあらすじ ※ネタバレを一部含みます。
ソル電気の創業者の日向は自分が末期癌であり余命が残りわずかなことを知る
残った命でどうしても叶えてやりたい願望があった
日向を殺したいであろう社員の梶間に自分を殺させてあげたい
梶間は同じソル電気の創業者の息子であり、父親は日向の過ちによって命を落としていた。
「君の望む死に方」を実現させる為に、日向は社員の研修に梶間を招集した。
一方の梶間も確かに日向の命を狙っていた
父親の無念を晴らすべく、ここのチャンスを狙っていた
揃えられた狂気、舞台、全ては完璧に揃えられていた
碓氷優佳を除いては
全ての用意をことごとく交わしていく
そして最終対決の前に現れた彼女から全てを見破られていることを聞かされる
その結果社長の日向が取った行動は
感想 結末の予想
毎度無茶が生じる舞台設定ではありますが、今回もしっかり最後まで描かれました。
殺されることを望む被害者というのも珍しいですし、しっかり明確に殺す意思があるのにここまでしなくては殺せないという設定も今回の関係でなければ難しいことかもしれません。
確かに社長を殺そうと思うと、通りすがりとかでも中々難しいかもしれません。
結局を言ってしまうと最後の最後まで事件は起きないのでミステリーとしては序盤がどうしても退屈でした。
これだけの舞台が揃っていて中々殺人が起きないわけですから。
ミステリーとしては早く次の死体が出てきて欲しいななんて思ってしまうものです。
終盤にかけては碓氷優佳の推理が冴え渡ります。
せっかくの仕掛けを悉くかわすのも良いですし、
犯人側を誰かが社長のところに行くかもと警戒するあたりも中々でした。
ましてやお見合いパーティーというのをうまく利用して、恋のキューピッドになって思いとどませようとする件は
洒落が聞いてて良いですね
事件の結末
事件の結末は読書に委ねられることになりました。
序章の部分で死体が発見されたことは書かれており
どちらかが殺されたことは間違いないです。
梶間が見事殺すことが出来たのか、碓氷に唆された日向が返り討ちにするのか
はたまた相打ちでどちらも死んでしまったのか。
個人的には日向が返り討ちにしてしまった気がします。
日向が反撃に出るとまでは予想していないでしょうし、
本気できたら梶間であっても交わすことはできないのではないか。
父親だけでなく息子も殺してしまう罪悪感で今後の余命を過ごしそうな気がします。
そしてそれが碓氷の望む死に方な気がします。
私を巻き込んだことを許さないと言わんばかりの悪魔です。