【読書レビュー・感想】未来/著:湊かなえ

暗い!暗すぎる! 彼女たちに明るい未来はあるのか?!

湊かなえさんの10周年記念となるこちらの作品

文庫化を待っての読了となりました。

単行本から気になってはいたのですが、何となく良い評判がなく手が遠のいていました。

でも読まずにはいられないタイトル、そして表紙がかなりお気に入りです。

ちょっと文庫本は安っぽくなってしまっておりますが、電子書籍で買ったので無問題!笑

早速読んでみた感想をまとめたいと思います。

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簡単なあらすじ ※若干のネタバレにご注意

小学生にして父親を亡くしてしまう少女

そんな彼女の元に未来の自分から手紙が届く!

半信半疑ではあるものの書かれていることは自分しか知らないこともあったり

ただ具体的には何も書かれておらず、明るい未来が待っているからと励ましの言葉が書かれていた。

少女はどこに送るでもない未来の自分への返事を書くことにする。

ただ病弱な母親との2人暮らしは良い事ばかりは続かず

母親に新たな男ができたことを機に人生は暗転していく

学校でのいじめ

亡くなった父親の保険金目当ての男たち

そんな生活を理解してくれる同じような境遇の友人が出来るも

更なる不幸が降りかかる

辛い人生を前に2人の少女は恐ろしい行動を決意する

あらすじの続きからそのまま感想

手紙のみで進む「章子」とつけられた話でざっと話が進んだ後は

エピソードⅠ Ⅱ Ⅲと別のキャラクターの視点で描かれる

1では友人の亜里沙

父親からDVを受けるこちらも暗い人生を歩んでおります。

基本的にはこの2人が事件を決意して夢の未来を求めてドリームランドに向かう

そう言った話になっております。

この辺まで読んでの感想が

とにかくもう暗すぎる!

いやいやこんな辛い人生を見せつけなくても良いやん

確かにこんな目に遭っている人もいるだろう

けど読んでるこちらも辛くなってしまうよ・・

キラキラ光っていた「未来」の表紙の物語はどこへ

イヤミスどころかイヤイヤじゃないか

そのくらい暗い物語が続いていきます。

エピソードⅡ

今度は冒頭に少しだけ出てきた女性教師の目線で描かれます

これがまた・・・暗い!

どうしようもない小学生や中学生の話であれば、環境のせいとも言えるのですが

大学生になってからの降りかかる不幸に胸が締め付けられます。

未来から来た手紙の真相なども分かっては来ますが、

この話は重すぎます。少し内容を救っているところもありますが、それがまた暗さに拍車をかけている気さえするほど

こんな辛い物語を書いてしまう湊かなえさんを心配してしまうほどでした。

エピソードⅢ

次は亡くなってしまった少女の父親目線の話

両親の真相が明らかになります。

実は母親が犯罪を犯していたり、2人が駆け落ちであったりする事実は最初に書かれておりますが

真相までは語られておりませんでした。

ここでは2人が高校時代に出会ったエピソードから書かれておりますが

これが夫婦となる2人の出会いなのか・・・

そう思ってしまうほどこれまた暗い話です。

ただこちらの章はミステリー要素も強くエンタメとして見れるかなと

それまではただただ暗い話でして・・・

内容もことの発端となった事件が起きますので楽しめる章となっております。

最終章から個人的な感想 ※ネタバレ注意

最終的に事件を起こした2人がそのままドリームランドへ向かいます。

入場口までたどり着くも、ここのゲートを潜るのは今日じゃないと引き返すところで物語は終わります。

未来からの手紙を受け取った私たちは必ずまたここに来れると

綺麗な終わり方ではありますが、個人的にはドリームランドには入って欲しかったなと

少しでも明るい未来を感じて欲しかったと思ってしまいましたね。

現実に立ち向かう決意というところでは良かったですが、最後まで明るい未来はお預けとなってしまいました。

未来からの手紙のからくりもわかってしまった以上、書かれていた明るい未来があるという言葉は本当に励ましの言葉でしかなく

根本的に問題を解決できたわけでもないので、物語中に希望を見出すことが出来なかったのを勝手に悔しく思ってます。

ただ湊かなえさんの手法と言いますか、登場人物の視点変更で徐々に明らかになる作品構成は健在

今回もまず大まかなストーリーを1人の少女目線で描き

そこに書かれていた謎を次の章から順番に明かしていく。

そしてラストシーンに向かっていくという湊かなえさんが作り上げた技法と言っても過言ではない世界が今回もありました。

前回のブロードキャストからも伝わる通り

文章に関しては強い思いを持っていらっしゃいますね。

本を手に取っている我々読書好きには堪らない熱を感じることができます。

今回はちょっとイヤイヤミステリーではありましたが

ファンであることに変わりはなく、今後も新刊は手に取っていくことでしょう

 

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