記念碑的な書簡小説 元夫婦のやり取りに人生を重ねる
夏の100冊特集を以前したのでそちらから気になった作品を読んでみようと手に取ったのがこちら
宮本輝さんの「錦繍」
【結局良作!】新潮文庫 夏の100冊 3年間選ばれてる本のまとめ!
宮本輝さんと言えば高校時代の国語の先生に絶対読んだ方が良いとオススメされていた作家さんでした。
「青が散る」なんかも好きな作品ですね。
新潮文庫の夏の100冊に選ばれ続けていたこの作品
しっかり読んできましたので書いていきます。
簡単なあらすじ
愛し合いながらも離婚することになってしまった夫婦
その10年後に蔵王で再開したことにより交わされることになり手紙のやり取りを交わすことになる。
その中には知らなかった過去や思いが書かれていた。
別の女性と無理心中に巻き込まれてしまった旦那
その女性とは学生時代からの悲恋があった。
そして離婚から再婚した妻
愛がない夫婦生活であったが愛する一人息子がいた。
あんな事件があったにも関わらず2人は愛し合っていたのではないか
色んな思いが募る中、手紙のやりとりは終わらなければならない瞬間を迎える
オール手紙のみ 初めての体験に戸惑いつつも終わりが怖い
この前に読んでいたのが湊かなえさんの「未来」
これも最初の1章は未来の自分へ宛てた手紙にて構成されておりました。
それ以降は小説の程をとっていますが、この錦繍に関してはずっと手紙のやり取りのみです。
徐々に慣れてはきますが最初は戸惑いが多く、読み進めるのに時間がかかってしまいました。
特に女子のパートは特有の長ったらしい説明があったり、あまりオチがなかったりと
リアルな手紙を感じる部分と
小説の為、お互い知っているであろう事件についても細かに書かれていたり
不自然さも感じてしまいました。
ただ話が進むにつれて、このやり取りを待っている自分がいます。
これにどういった返事が来るのだろう。
前の手紙を読んでいる時から次の返信が楽しみな
そんな忘れかけていた手紙のやり取りを思い出したりもしました。
そして残りページが少なくなってきます。
手紙の内容もそろそろやり取りをやめないといけないと思い始めているのがわかります。
終わらせないで!そんなことを思いながら最後のページにたどり着いてしまうのでした。
文通の文化はなくなってしまったのか・・・
基本的には悲恋と言える内容でしたが手紙により少しは救われたのかななんて思います。
今では手紙のやり取りなんてほぼやらないですよね。
お金かかる、時間かかる、手間かかる
メールですいっとやれてしまいますからね。
でも形態は変われどやっていることは一緒かもしれません。
待っている時間は10分とか、チャットだと10秒とかに減ってしまったかもしれませんが
返事を待っている間は楽しいものでもあります。
返事がないと寂しいものでもあります。
長文のラインが来ると嬉しさもありますし、返事を悩んだりするのも文通時代から変わらないものかもしれません。
好きな人に手紙を書いてみたい
そんなことを思った小説となりました。